ワルツ(上・中・下)

作者:花村萬月|角川文庫
終戦直後の新宿を舞台とした大河小説。
特攻崩れの城山は、ヤクザの依頼を受け、愚連隊に日本刀で殴り込みをかけ、殲滅する。
朝鮮人の林敬は、日本の大学生だが、美貌を活かし、売春婦と同棲をしている。
疎開先で親戚に犯されそうになった百合子は、着の身着のままで東京にやってくる。
城山は殴り込みが伝説となり、若者たちのリーダーとなり、城山組を興す。
林は、同棲していた売春婦を米兵に殺され、自身も顔に傷を負う。
百合子は、浮浪児の三郎と共に新宿の博徒に保護される。
3人はそれぞれ新宿で顔を合わせ、城山も林も百合子に惹かれる。
だが、百合子は博徒の親分の澤村と結ばれる。
3人の行動が交差し、やがて対立していく。


戦後の混乱を駆け抜ける3人の話は面白い。
トレードマークの過剰な暴力と性描写も控えめなのもいい。
だが、過剰をなくせば、この作家は意外と普通すぎる。
戦後の若者の思弁をリアルに抉っているところは読みごたえがある。
文庫本で1600ページの長さは感じさせないが、傑作ではない。