転生

作者:篠田節子講談社文庫
中国政府から弾圧を受けるチベットが舞台の荒唐無稽なファンタジー
パンチェン・ラマ10世というダライラマに次ぐ地位の宗教指導者のミイラが蘇る話。
僧院の土産物屋で手伝いをする少年のロプサンは、金色のミイラが動くのを見つける。
ミイラのラマは中国政府に対する激しい怒りを秘めていたが、欲望も隠そうとしない。
モモという餃子のような食べモノと女性に対しては本能のままに行動する。
プサンとラマは、サムドゥというトラックの運転者と出会い、行動範囲が広がっていく。
さらに、弾圧下のチベットで自由に生き、携帯電話を所有するサンポも仲間に加わる。
4人は、中国政府がチベットの山を核爆弾で破壊し、砂漠化した中国側に雨を降らす計画を知る。
チベット南部では水害に悩まされ、一見合理的な計画にも思えた。
だが、ラマはこの計画を阻止するため、核爆弾を奪取しようとする。
実際に行動するのはロプサン、サムドゥ、サンポの3人。


敵として中国人、テレビクルーの日本人が傍観者として描かれるが、ほとんどはチベット人による物語。
最初は金色のミイラが蘇り、都合が悪くなると姿を隠すところに戸惑いはあった。
でも、作中にある中国によるチベットへの弾圧を読むと、ミイラと3人に共感を覚えた。
捕まると死刑は免れないのに、ラマと行動する3人の冒険譚は面白かった。


転生 (講談社文庫)

転生 (講談社文庫)