怖い本9

作者:平山夢明|ハルキ・ホラー文庫
平山夢明は、東京伝説などのサイコホラーのイメージが強いが、元々はデルモンテ平山という怪談作家。
最近はこの「怖い本」シリーズで正統派の怪談を提供している。
竹書房の怪談シリーズで、新しい作家が出てくるようになったが、この作者は安定している。
37本の作品が収録されていて、クオリティは高い。
第1話の「通夜の番」の死体に引き吊り込まれる描写。
第5話の「おとしまえ」の轢死体を携帯で撮影した後に訪れる怪異。
第7話の「じざべる」の生き人形と過ごす時間と持ち主の狂気。
第12話の「闇滑り」では仕事熱心な映画監督が墓地を移動させたことによる意外な祟り。
第21話の「遅刻」は同窓会の会場にたどり着けないテレビマンの因果。
第34話の「回覧板」の怪我をした男性が深夜徘徊で見かける悪夢。
でも、東京伝説が強烈過ぎて、少し物足りなさを感じてしまう。
東京伝説は置いておくとして、本作は上質な怪談集だ。