渋谷に里帰り

作者:山本幸久新潮文庫
小学生のころ、渋谷に住んでいた稔は、パン屋を畳んだのをきっかけに父の実家に引越しをする。
渋谷在住の住民が土地開発で減っていき、残る住民たちに、裏切り者扱いされたと稔は勝手に思い込んだ。
その後、大学も就職した会社も東京にあるのに、渋谷に足を運ぶことはなかった。
国立大学を出て、食品会社に就職した稔だが、そこそこのルックスなのに、覇気がなく、ダメ社員扱い。
先輩のやり手女子社員の坂岡が結婚退職することになり、稔は坂岡の担当エリアの渋谷地区を引き継ぐことになる。
渋谷へのアレルギーを抱えたまま、坂岡と共に引き継ぎの営業に出かける稔。
坂岡の工夫を凝らした営業、小学校の同級生との再会により、稔に少しずつ変化があらわれはじめる。
先輩社員のおかげで、向かいの会社の屋上で素振りをするOLとも仲良くなる。


主人公の稔が作中で大きなことを成し遂げるわけではないが、気持ちの変化が面白い。
仕事が面白くない人や行き詰っている人にはおススメできる内容となっている。
また、渋谷の描写は細かいので、渋谷が好きな人は一読の価値はあると思う。
大阪から移り住んだ自分は、渋谷の雑多さは結構好きだ。


渋谷に里帰り (新潮文庫)

渋谷に里帰り (新潮文庫)