最終退行

作者：池井戸潤｜小学館文庫
バブル崩壊後、負け組となった大手都銀の東京第一銀行。
羽田支店の副支店長の蓮沼は、支店長と折り合いが悪く、部下も言うことを聞かず、苦しんでいた。
中小企業の多い地域で、大半の融資先が赤字であえぐ中、本部は貸し剥がしを始めようとしていた。
部下の塔山は、そんな銀行に嫌気を示し、出向先を拒否し、退職する。
塔山は私服を肥やす東京第一の会長を罠にはめるために、怪しげな連中と何か企んでいた。
蓮沼はそんな塔山を黙って見過ごしていたが、支店長の谷に騙された顧客が自殺。
谷の言動に憤った蓮沼だが、返り討ちにあい、長崎の水産会社に出向を命じられる。
家族には出て行かれ、打ちひしがれる菱沼だったが、塔山とは別の方向から会長の不正に気付く。
戦後から暗躍しているＭ資金詐欺を背景にした金融サスペンス。
他人を蹴落とすために自己保身にはしり、役職を振りかざし、部下を恫喝する。
そんな嫌な行員がたくさん出てきて、蓮沼が追い詰められていくところはスリルがある。
銀行の利益を守るより、人間らしくありたいという蓮沼の最後の逆転シーンはいい。
金融小説はあまり読まないが、これは面白かった。

最終退行 (小学館文庫)