いっぺんさん

作者:朱川湊人|文春文庫
9つの短編が収録された作品。怪談とファンタジーが入り混じっている。
元々、怪談作家としてデビューしたのに、最近は人情モノにシフトしている。
本作は初期の雰囲気が戻ってきていて、子供たちの不条理な死が多く描かれる。
表題作の「いっぺんさん」も子供の死を扱っているが、これは希望を感じさせる。
「コドモノクニ」「山から来るもの」「八十八姫」の子供の死は救いが無い。
「小さなふしぎ」は傷痍軍人が小鳥に芸を仕込む話で、ノスタルジック感があふれている。
「逆井水」「蛇霊憑き」「磯幽霊」は正統派ゴシックホラーだと思う。
子供の視点で描かれるあっけない死に無常感を覚えるが、現代の民話のようでもある。
読み手を引きづり込む良作。


いっぺんさん (文春文庫)

いっぺんさん (文春文庫)