田村はまだか

作者:朝倉かすみ光文社文庫
札幌の深夜のバーで、小学校の同窓会の3次会が始まっていた。
集まったのは、40歳を過ぎた男3人と、女2人。
彼らは、小学校からご無沙汰の「田村」の到着を待っている。
貧乏だけど、真っすぐだった田村に対して、卒業してからさらに会いたい気分が高まっていく。
やがて、彼らの想い出話が始まり、バーのマスターが気に入った台詞を記録していく。
この話は田村を待つ5人の社会人になったエピソードを描いた連作だ。
何気ない普通の日常なのだけど、その瞬間を鋭く切り取った描写や、心に残る台詞がある。
そのなかで、気のきいた一言をマスターが書き留めていく。
人が人を想うという陳腐な表現かもしれないが、巧みな表現力で上手くまとめている。
ストーリーは平凡なのだが、とにかく描写が上手く、心に残るだろうと思う作品。


田村はまだか (光文社文庫)

田村はまだか (光文社文庫)