モーニング

作者:小路幸也実業之日本社文庫
1980年、大学時代に東京で同じ下宿で暮らし、バンド活動をしていた5人。
20数年後、仲間の一人が事故で亡くなり、葬儀に参加するため福岡に集まった4人。
淳平は役者になり、ヒトシは茨城で中学教師、ワリョウは石川で豆腐屋、私はカフェを経営していた。
大学卒業以来、4人で顔を合わせるのは初めてだった。
淳平の運転するレンタカーに乗り、私たちは福岡空港に送ってもらう。
だが、淳平はレンタカーで東京に戻った後、自殺することに決めたという。
私やヒトシ、ワリョウは淳平の自殺を思いとどまらせるため、一緒にドライブを続ける。
「自殺する理由を当ててくれ」と淳平は言い、学生時代にその動機はあるという。
4人は喪服を着たまま、東京までのドライブを続け、過去の話を続ける。
深夜に石川に到着するが、ワリョウは下りず、過去を思い出しつつ、車は東京を目指す。
想い出話の中に、淳平が過去に付き合っていた女性の姿が浮かび上がる。
それは私がかつて片思いした女性でもあった。


社会に出てから、学生時代を振り返ると、多くの人はたくさんの楽しい想い出が残っている。
中年になり、あのころ夢見たことは叶わず、苦い現実と向かいあっている。
そんな悲哀と、過去の煌きが痛いほど感じられた作品だった。良い。

モーニング Mourning (実業之日本社文庫)

モーニング Mourning (実業之日本社文庫)