さよなら渓谷

作者:吉田修一新潮文庫
以下、文庫本裏書きを引用。

緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。
実母の立花里美が容疑者に浮かぶや、全国の好奇の視線が、人気のない市営住宅に注がれた。
そんな中、現場取材を続ける週刊誌記者の渡辺は、隣家に妻とふたりで暮らす尾崎俊介が、ある重大事件に関与した事実をつかむ。
そして、悲劇は新たな闇へと開かれた。呪わしい過去が結んだ男女の過去の罪と償いを通して、極限の愛を問う渾身の長編。

子供殺しより、隣家の尾崎夫婦の問題をえぐった作品。
二人の間に横たわる問題は深刻で、その馴れ初めはあまりにも悲しい。
季節が夏で、逃げ場のない暑さに淀む、二人や記者の描写が生々しい。
この作家は当たり外れの幅が大きいけど、これは面白かった。

さよなら渓谷 (新潮文庫)

さよなら渓谷 (新潮文庫)