出世花

作者:高田郁|祥伝社文庫
「みおつくし料理帖」シリーズの作者のデビュー作。
不義をはたらいた妻を三重の久居藩から江戸まで追いかけた武士がいた。
武士は江戸の西部で力尽き、一緒に連れていた娘の艶を残し、ノタレ死にする。
武士の最後を見とったのは、非公式に葬儀を行う寺だった。
艶は、住職から縁という新しい名前を与えられ、死者を洗う湯灌を手伝うようになる。
縁の真っ正直な生き方は周りに影響を与え、製菓を営んでいる商家から養子の話が出てくる。
だが、縁は断り、湯灌を自分の仕事と決め、寺で働き続ける。
棺桶職人が無実の罪で拷問で殺されるなど、今の作者には考えられない凄惨な記述もある。
また、花魁との関わりで、遊郭を訪れる客が毒殺される事件の謎を解くミステリもある。
最後は優しい兄弟子がさる武家の跡取りであったというオチを、上手くまとめている。
時代小説の連作集だが、「みおつくし料理帖」の下地になったことがうかがえる小説で、面白かった。
プロットとしては、こちらの方が面白いが、今の作者の作品を読めば少し物足りなく思う。
それだけ、この作者が上手くなっていると感じさせる作品でもある。

出世花 (祥伝社文庫)

出世花 (祥伝社文庫)