逃亡

作者:吉村昭|文春文庫
戦局が悪化した昭和19年霞ヶ浦航空隊。
若い整備兵の幸司郎は門限破りを助けてもらった男に恩義を感じ、交流するようになる。
男に命じられるまま、パラシュートを基地外に持ち出す。
だが、パラシュートが無くなったことに気付いた管理者が騒ぎ出す。
幸司郎は男に相談を持ちかけると、飛行機を爆破し、なくなったパラシュートの隠蔽を進められる。
幸司郎は男の計画に従い、飛行機を爆破するが、自身のミスで疑いをかけられる。
同僚が拷問にかけられているのを見て、逃亡を決意する。
逃亡には成功し、東京にやってくるが、戦時下の東京では若い男性は目立って仕方がない。
幸司郎は口入屋に依頼して、軍属として千島列島に逃れる。
だが、そこはタコ部屋で、過酷な労働を強いられる。
脱走する仲間も出てくるが、簡単に連れ戻され、手ひどいリンチが待っていた。
ある日、怪我をした幸司郎にも傷口に煮えたぎった油をかけられる制裁が加えられた。
タコ部屋の同士と脱走をした幸司郎は終戦を迎えるが、その後は連合軍のスパイとして北海道で活動を強いられる。


わずかな過ちで、軍を離れた若者の苦闘の物語。
十分に面白いシチュエーションなのだが、吉村昭にしては、あまり面白いとは思わなかった。
全集におさめられたものの再文庫化。

新装版 逃亡 (文春文庫)

新装版 逃亡 (文春文庫)