Iターン

作者:福澤徹三文藝春秋
東京の広告代理店に勤める47歳の狛江は、北九州への転勤を命じられる。
不景気の折、狛江の広告代理店もリストラを進めていて、赴任地で結果を出さないと後がない。
狛江は北九州支社の支店長として、オフィスに着任するが、やる気のない部下が二人だけ。
仕事も地周りのしょぼい仕事しかなく、仕事を発注する印刷会社も技術力が欠けていた。
狛江は印刷会社を切ることにした。だが、最後に発注した仕事でミスが発覚。
クライアントはヤクザの竜崎が経営する街金だった。慰謝料を請求される狛江。
印刷会社にミスを押し付けようとするが、経営者はシラを切る。
脅されるまま、サラ金で金を借りた狛江だが、竜崎と対立する岩切というヤクザにも絡まれる。
成り行きで岩切の舎弟になってしまった狛江は、週末に岩切の事務所で電話番をする羽目になる。
本社からは完全にリストラの対象になってしまい、家族からは見放されてしまう。
捨て鉢になり、自分を見失う狛江だが、岩切の息のかかった飲み屋で怪しげな薬物を飲まされ、東京の上司に啖呵をきる。
岩切が黒子になり、クライアントを獲得していくが、竜崎と岩切の対立は収まらない。
互いに一歩も引けないところまで来て、狛江も抗争に巻き込まれていく。


巻き込まれ型ストーリーの典型と言っていいほどのスリルがあり、コミカルで、暴力的な小説だった。
不運が立て続けに主人公を襲う展開は面白い。奥田英朗の「最悪」と「邪魔」に雰囲気は似ている。
結末も上手くまとめていて、オチも良かった。
怪談を多く書いているが、もっと評価されていい作家だと思うし、近いうちに何か賞を取ると思う。

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