銀二貫

作者:高田郁|幻冬舎文庫
江戸中期の大坂天満。
寒天屋の主の和助は仇討で父を失った少年を銀二貫で買い受ける。
当時の大坂はたびたび火事に見舞われ、この銀二貫は天満宮再建のための金だった。
番頭に苦い顔をされるが、引き取った少年に松吉という名を与え、丁稚として働かせる。
松吉は勤勉で良く働く少年に成長するが、寒天の味を知らずに育った。
そんな時、料理人の嘉平とその娘の真帆に出会う。
嘉平に料理のつなぎとしての寒天の素晴らしさを教わり、真帆に恋心を抱く。
だが、また難波の町は大火に見舞われ、嘉平の店は焼け落ち、真帆は顔に火傷を負い、姿を消す。
和助の店で勤めながら、新たな寒天を作りだそうと松吉は冬の間、修行に出かける。
真帆は火傷をからかわれながら、健気に団子を売っていた。
松吉は真帆のことがずっと好きで、いずれ真帆を迎えに行こうと考えていた。
新しい寒天が出来そうだが、再び火事が二人の距離を遠ざけてしまう。


登場人物は多くないし、火事以外にはそんなにハプニングはない。
地味な小説だが、面白いと思った。
寒天という食材をよく調べて、当時の味を表現しようとした作者の手腕は素晴らしい。
また、人との信頼関係を登場人物が少ないながらも、深く描いている。
和助の最後の台詞はウィットが効いていて、この小説を際立たせている。
食のこだわりと人情をテーマにした時代小説。良い。

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)