影法師

作者:百田尚樹講談社
茅島藩筆頭家老の名倉彰蔵は、20数年ぶりに江戸から国元に戻った。
名倉は下士より異例の出世を遂げたが、親友の磯貝彦四郎の死を知り、愕然とする。
名倉は幼いころ、目の前で父親を上士に殺害され、貧困の中で成長した。
市井で学問、剣術を習い、内職で虫籠を作り、母を支えてきた。
そのころ、磯貝に出会うが、磯貝は剣術も学問も同年代の少年の中では抜きんでていた。
茅島藩で起きた百姓一揆で、首謀者が磔になり、町奉行切腹をする様を目撃した二人。
名倉と彦四郎は親友となり、藩政を変えていこうと誓う。
御前試合で、主君の目にとまった名倉と彦四郎は順調に出世していくかに見えた。
だが、上意撃ちを命じられた時から、二人の明暗が分かれる。
背中に傷を負った彦四郎は「不名誉傷」と見られ、養子縁組の話はなくなってしまう。
上意討ちを果たした名倉は出世の道を駆け上がっていく。
江戸に立つ前に名倉は、彦四郎が人妻に乱暴を働き、藩を出奔したことを知る。


友情をモチーフにした時代小説で、なんとなく「泣いた赤鬼」を彷彿させる。
彦四郎の過酷な運命は、名倉を守るために自らを殺すという生き様だった。
名倉の辿ってきた足跡も十分面白いのだが、その陰で、彦四郎が常に名倉を守っていた。
彦四郎の足跡が明らかになるにつれ、息苦しいような気分になる。

この作家は非常に良い話を書く。展開も飽きない。


影法師

影法師