左腕の誇り 江夏豊自伝

作者:波多野勝|新潮文庫
阪神のエースで、その後優勝請負人として色んな球団を渡り歩いた江夏。
彼のインタビューを中心に構成された自伝で、江夏というピッチャーの凄みは伝わってくる。
世界記録のシーズン401奪三振。オールスターでの9者連続三振。
日本シリーズでの『江夏の21球』など、伝説的な出来事が、本人の口から語られる。
面白いドキュメンタリーだが、すでに知っていることも多く、新鮮味は感じなかった。
自分自身、江夏の全盛期は知らず、記憶にあるのは日ハム時代の太った姿だ。
引退後、覚せい剤使用で実刑を食らったが、その記述が少ないのは不満だった。
阪神時代の映像は探してみようと思う。
阪神という球団は、生え抜きの選手をいとも簡単に放出するが、今の阪神には生え抜きのスター選手はいない。
さかのぼって考えると、掛布と岡田が最後ではないか?
低迷期にチームを支えた和田や八木は阪神の選手のまま引退したが、チームの顔ではなかった。
今岡も主力を張っていた時期はあるけど、今はロッテにいる。
赤星の活躍は目覚ましかったが、ミスタータイガースとは言えるほどではない。
鳥谷も良い選手になったが、たぶん、ミスタータイガースにはなれないだろう。
金本がミスタータイガースだと考えるファンはどのくらいいるのだろう?
有力選手が海外に流出するのが当たり前のようになった現在、チームの顔となる主役が引退までチームにいる可能性は低い。
長嶋や王のように、入団した球団でスターになって、そのまま惜しまれつつ引退というのはレアケースなのだろうな。
これは文庫本なのだが、表紙の江夏の写真は格好いい。

左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)

左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)