白と黒が出会うとき

作者:新堂冬樹河出書房新社
病院を舞台にした作品で、作者の新境地かなと期待した。
患者と真摯に向き合う看護師の早苗と、医療法人の乗っ取りを生業にする恭司が主人公。
早苗には末期がんでホスピスに入居している父親がいる。
恭司は幼少のころ、誤診で父親を亡くし、病院を訴えた母親も失意のまま死亡した過去を持つ。
患者や同僚からも慕われる早苗の勤務先をターゲットにした恭司が、病院にやってくる。
恭司は早苗を偽善者だと決めつけるが、彼女の働く姿を見て、躊躇いを感じる。
早苗は恭司の胡散臭さを感じつつも、彼の中に優しさを見つける。


この後はお決まりの破滅に向かうパターンになるが、描き方が雑だったように思う。
この作家の面白いところは、徐々に絶望に追い詰められ、逃げ場もなくなる描写力だった。
医療法人をカモにする描写は面白いのに、最近は破滅のカタルシスの筆力が弱い。
純愛とブラックな棲み分けは最近の作品では面白かった。
でも、デビュー当時の毒に触れてしまっているので、これでは物足りない。
一度読み始めると止まらないだけのテクニックは健在だけど。

白と黒が出会うとき

白と黒が出会うとき