乱神

作者:高嶋哲夫幻冬舎
13世紀後期、十字軍の遠征もサラセン人を打ち破れずに、目的を失いつつあった。
イングランドの騎士のエドワードは、乱戦の中、国王とはぐれてしまう。
船を調達し、窮地から逃れるが、船は東に向かい、さらに流され、たどり着いたのは日本だった。
折しも日本は元寇の真っただ中で、文永の役で破壊された九州に上陸した。
日本の武士にとらえられたエドワードと20数名の部下だが、元の残敵を打ち破り、信頼を得る。
エドワードたちは鎌倉に護送され、北条家の執権時宗と面会する。
エドワードと時宗は心を通わせ、元の次の侵攻を考え、対策を練る。
エドワードは、日本の侍の戦の作法を改めようとし、鎌倉武士の反発を受ける。
辛抱強く、調練を続けるが、元は15万の大軍で、再び日本を襲う。
エドワードは20人の部下を率い、九州に向かい、博多の商人や大工、漁師を自軍に組み入れる。
元の上陸地点に陣を引いたエドワードは、組織戦で元を翻弄する。
だが、旧来の戦をしようとする日本の武士たちに足を引っ張られる。
ほころびのできた戦線を修復しようとするエドワードは、次第に部下を失っていく。


「人は命の火が燃え尽きるとき、何を以って安らぎを得るのか。土地や地位や財産ではない。
神による救いでもない。どう生きたかという、物語のみだ。」
「我らは神の軍隊だ。負けるはずがない。」
「民あってこそ、日々の糧を得ることができる。その民を護ることこそ、我らの使命だ。」
クライマックスのエドワードの台詞はいい。


話の設定としてはたまらなく面白くなると期待したし、結末はたしかに盛り上がった。
面白かったが、少し残念なのはエドワードの部下をもう少し丁寧に描写してほしかった。
で、時宗との交流は過剰なくらいだけど、なんか少しずれているように思うな。

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