ソウルケイジ

作者:誉田哲也光文社文庫
美人警部補姫川玲子の活躍を描いた作品で「ストロベリーナイト」に続く第2弾。
多摩川の土手に放置された車の中から、切断された手首が発見された。
近くの工務店のガレージは血まみれになっていて、主人が行方不明となっていた。
死体なき殺人事件として、捜査が開始される。
被害者とみられる主人の高岡は、工事現場で父を亡くした耕介を引き取り、大工として育てようとしていた。
耕介の父を雇っていた会社には従業員に保険をかけ、不審な死が続いていた。
その保険を担当していた総務の戸部が容疑者として浮かぶが、高岡の手首が見つかってから行方不明となっていた。
玲子は、発見された手首の状況に違和感を持ち、親しくしている監察医に再度鑑定を依頼する。
この作品は高岡という男の生き様を明らかにしていく中で、浮かび上がる強烈な父性が重要なテーマになっている。
また、捜査にあたる刑事たちの人物描写もエピソードを挿入し、丁寧に面白く描けている。
でも、犯人が何となく最初からわかってしまうのが残念だし、「ストロベリーナイト」のような派手さはなかった。
だから、犯人の凄惨な覚悟をもっと過剰なまでに描いてほしかった。
とはいえ、警察を舞台にした作品の面白さのツボを押さえることのできる作家だと思う。