水上のパッサカリア

作者:海野碧|光文社文庫
40歳過ぎの大道寺勉は自動車の1級整備士の資格を持ち、10歳以上年下の女性と田舎で暮らしていた。
冒頭から、その女性が交通事故で亡くなるのだが、回想シーンとともに大道寺の過去をさかのぼる。
養父を秘密裏に殺害した大道寺は、弁護士の斯波に引き取られるが、アメリカの傭兵キャンプに置き去りにされる。
そこを生き抜いた大道寺は、斯波とともに、邪魔な人間を排除する裏稼業に手を染める。
幾人かを社会から抹殺したのだが、最後のターゲットとした若手実業家のバックがまずかった。
若手実業家の父は裏金融の元締めともいえるフィクサーで、暴力団や政界にも顔がきいた。
大道寺と斯波の暗躍がばれ、かつての仲間が拉致され殺害される。
すっかり足を洗ったつもりの大道寺はそのことを知ることもなく、パートナーを失った悲しみに暮れていた。
そこに斯波が訪れ、フィクサーを返り討ちにしようと持ちかける。
大道寺の彼女が事故で亡くなったのはフィクサーの差し金だという。
大道寺は気が乗らないまま、フィクサーの抹殺計画に加担する。


第10回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
読んでいるうちは確かに面白かったのだが、主人公に魅力がなく、クライマックスも起伏に欠けた。
それでも、大道寺の彼女の奈津や、敵か味方かわからない犬好きの経済ヤクザの岡野の人物造詣は魅力的だった。

水上のパッサカリア (光文社文庫)

水上のパッサカリア (光文社文庫)