無理

作者:奥田英朗文藝春秋
合併により「ゆめの市」となった東北地方の自治体が舞台。
5人の主人公が様々なトラブルに巻き込まれていく話。
公務員でケースワーカーの友則は、生活保護の打ち切りに奔走している際に、主婦売春の現場を目撃する。
高校生の史恵は、大学進学とともに地元を離れる決意をしていたが、サイコパスに拉致されてしまう。
元暴走族で、現在はインチキ商法のサラリーマンをしている裕也は、別れた妻から赤ん坊を押し付けられる。
スーパーで万引きを監視する妙子は、夫と離婚した後は、新興宗教にのめり込んでいる。
市会議員の順一は、父の地盤を引き継ぎ、さらなるステップアップを目指しているが、家庭内は不協和音。
最初からトラブルに巻き込まれる登場人物たちに、ぐいぐいと引き込まれていった。
作者お得意の巻き込まれ型小説で、面白い作品だった。こういうのをもっと書いてほしい。
ただ、地方の過疎の街を馬鹿にするような記述は、戸梶圭太まではいかないが、どうなんだろう?
個人的にはバカバカしくて笑えるのだが、実際にそういう場所に住んでいる人たちはどう思うだろう。
ストーリーはいつもどおり面白い。500ページを超える大作だが、飽きるところはなかった。
「最悪」「邪魔」に続く系譜の作品だ。それだけに結末を無理にまとめた感があり、残念。
もう100ページくらい増やせば、「最悪」や「邪魔」を超える作品になったと思う。

無理

無理