エトロフ発緊急電

作者:佐々木譲新潮文庫
太平洋戦争開戦前夜。スペインの内戦で義勇軍で活躍したケニー斉藤は、アメリカに戻り、殺し屋稼業に身を落としていた。アメリカの諜報部はケニー斉藤を捕捉し、対日本戦のためのスパイとして仕立て上げる。斉藤は日本に潜入し、米国人の神父や朝鮮人の労働者とともに、日本の開戦時期を探る。戦局が直前に迫った東京で、斉藤たちは暗躍するが、憲兵に察知される。仲間を失いつつも、日本の開戦を知った斉藤は、連合艦隊の出撃場所の択捉島に潜入する。そこでロシア人の混血のゆきという女性に出会う。斉藤はゆきに惹かれながらも任務を続行する。だが、ゆきを伴ってアリューシャン列島へ脱出するには遅すぎた。斉藤への包囲は狭まり、ゆきとともに窮地に追いやられる。
作者の太平洋戦争三部作の2作目で、山本周五郎賞を受賞した作品。
国籍に翻弄される斉藤とゆきの奔放に生きようとする姿が、段々と追い詰められていくのは息苦しくなる。
序盤から主人公の破滅に向かうことが垣間見え、悲劇的な結末が用意されているが、面白い作品だった。
作者の太平洋戦争三部作の2作目となる作品だが、最初に「ストックホルムの密使」を読んだので、これが最後になった。
読む順番は違っても3作とも面白い。でも、できれば「ベルリン飛行指令」から順番に読んだ方がいい。

エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

エトロフ発緊急電 (新潮文庫)