Run!Run!Run!

作者:桂望実|文春文庫
長距離ランナーとして数々の記録を塗り替えてきた岡崎優。
彼は高校卒業後、S大に入学し、自分の能力を最大限に引き出すためのチームを作る。
ずけずけと嫌味を言うので、部員からは煙たがられるが、目標はオリンピックだ。
だが、医学部に通う兄が自殺し、母が壊れ、優は自分の出生について知ってしまう。
長距離ランナーとして走る能力を生かすために遺伝子を操作されていた。
父親は否定するが、優はこのことが真実だと思い、ランナーとしての将来に絶望する。
自らの疑惑を隠すために優は、箱根駅伝へのエントリーを辞退する。
大学側は優のランナーとしての価値を落とさないよう、同級生の岩本のヘルプにつける。
だが、岩本は優から見ると才能のかけらもないランナーだった。
走ることの意味を見失った優は岩本に辛くあたるが、徐々に彼を応援する気になっていく。
傲慢で人間味に欠ける主人公の苦悩の物語で、最後までシンパシーを持てなかった。
それでも乾いた文体で淡々と読ませる。面白いとまではいかないが、悪くなかった。
独特の世界観を描きつつ、読み手にそれを伝えるだけの力量がある作家だ。

Run!Run!Run! (文春文庫)

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