空色ヒッチハイカー

作者:橋本紡新潮文庫
東大を目指す彰二は、夏期講習をサボり、兄のキャデラックに乗り、九州を目指す。
高3の夏に思い出を作りたかったし、今はもう会えない兄を偲びたかった。
さほど努力もせずに、東大から財務省への就職が決まっていた。その兄はもういない。
彰二は無免許だが、一通り運転技術は身につけていた。
初日から杏子という美人のヒッチハイカーを拾い、先行きは順調だった。
杏子は彰二の車に乗り続け、その後も様々なヒッチハイカーを乗せる。
刹那的に出会い、別れる彼らとの交流と、兄との思いでを振り返りつつ、彰二は成長していく。
杏子とはけんかをしながらも、1週間で目指す佐賀の唐津に入る。
軽く読める青春小説だが、杏子との出会いはあまりにもお手軽だった。
おまけに、てっきり死んだ兄への巡礼の旅かと思っていたのに、唐津には兄が待っていた。
これは読者の勝手な思い込みに対する作者のフェイクなのだが、これで共感はなくなった。
クライマックスは冷凍いちごを口に含み、飛ばす競技で兄弟対決。
結末では杏子と彰二がうまくいきそうな記述で終わる。お約束のように。
これはあかんやろ。彰二はただヒッチハイカーを乗せただけで、成長もしていない。

空色ヒッチハイカー (新潮文庫)

空色ヒッチハイカー (新潮文庫)