検察者

作者:小杉健治|集英社文庫
過酷な社員研修で男性が死亡し、妻が研修の主催会社を訴えると思われた。
週刊誌には参加者が、研修で被害者が激しい暴力を受けていたと暴露した。
だが、主催会社が多額の慰謝料を支払ったため、妻は訴えず、検察も事件性はないとした。
一方、妻の不倫をネタにゆすられていた工場主が、脅迫者を殺害するという事件が発生。
工場主が殺害を自供したため、事件は終結すると思われたが、検事の桐生は腑に落ちない。
工場主は誰かをかばって、罪を背負おうとしている。
そう感じた桐生は工場主の妻に辣腕弁護士を紹介する。
研修リンチ事件も、不問になる寸前に検察審査会から、再調査すべしと意見が挙がる。
検察審査会とは、無作為に選ばれた一般市民11人から構成され、不起訴になった刑事事件を再度吟味する活動を行っている。
再調査をするための判断は審査会の中でも温度差があったが、結局再調査の方向で進む。
一見別々の二つの事件が実は、つながっており、桐生が紹介した水木弁護士が真相を明らかにする。
社会派長編ミステリーで、二つの事件の接点が次第につながっていくのは面白い。
裁判員制度とは少し違うが、一般市民が刑事事件に携わるという意味ではタイムリーな作品。

検察者 (集英社文庫)

検察者 (集英社文庫)