永遠の0(ゼロ)

作者:百田尚樹講談社文庫
終戦から60年目の夏。
司法浪人の健太郎は、ジャーナリストの姉からの依頼で、特攻で死んだ祖父、宮部久蔵の生涯を調べはじめる。
最初に出会った戦友は、「あいつは臆病者だった」と切り捨てる。
「生きて妻の元に帰る」という発言が、当時の軍人にあるまじき言葉だった。
一方で、真珠湾攻撃からミッドウェーまでを戦った戦友は、確かな操縦技術を持った優秀なパイロットだったと語る。
その後、久蔵はガダルカナルラバウルで過酷な戦いを強いられる。
アメリカ軍が新型戦闘機を大量に導入し、長距離を曳航後の戦闘で、ベテランパイロットたちは次々と戦死する。
生き残った久蔵はマリアナ沖海戦に参戦し、直後に特攻隊への志願を打診されるが、拒否する。
久蔵は国内に戻り、特攻隊に志願した予備学生の教官となる。
特攻に批判的な久蔵は飛行訓練に合格点を与えないことで、特攻への参加を遅らせようとする。
だが、久蔵も終戦の数日前に特攻に参加し、戦死。
彼の特攻に駆り立てた理由が結末に明らかとなる。
零戦の詳しい性能説明と、迫力ある戦闘描写で、宮部久蔵の卓越したテクニックが明らかになる。
また、日本軍の首脳部の決断力と責任感のなさと、マスコミの変節ぶりを容赦なく批判していて、痛快である。
エピローグとプロローグではアメリカ兵の視点から語られるのだが、これが泣ける。
面白い小説や感動的な話はそこそこ出会えるが、両方を備えた作品はなかなか出会えない。
この作品はそんな数少ない大傑作で、「BOX!」も面白かったが、デビュー作でこのクオリティーはただものではない。
すべての人におススメの作品。読まないと損だ。

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)