ストックホルムの密使(上・下)

作者:佐々木譲新潮文庫
第2次大戦末期、スウェーデンに駐在する海軍武官大和田大佐は極秘情報を入手する。
ドイツ降伏後、ソ連が日本を攻撃する動きがあること。
すぐさま、暗号で日本に連絡するが、握りつぶされてしまい、上部には伝わらなかった。
さらに、アメリカが原子力爆弾の開発に成功し、ソ連参戦前に対日戦で使用することを知る。
日本滅亡の危機に、大和田大佐は2人の密使を中立国のスイスに派遣する。
密使となったのは無国籍で賭博師の森四郎と、ポーランドの情報将校コワルスキだった。
森とコワルスキは、連合国占領下のドイツに潜入し、スイスを目指す。
だが、連合国の情報機関が大和田の動きを察知し、2人の行く手を阻もうとする。
一方、日本では海軍で和平へ向けた動きがあり、陸軍と対立していた。
和平工作を進める、米内光政、井上成美、高木惣吉ら海軍首脳陣と視野狭窄に陥った陸軍指導者。
この駆け引きを海軍省の書記官である山脇順三の視点から描かれる。
東京大空襲、広島への原爆投下などの悲惨な出来事も劇的に表現されている。
国家とは、祖国とは何かを問うた重い作品だが、ダイナミックでスリルに満ちた傑作。
下巻の表紙が、冒険譚の核心に迫るシーンなので、ネタばれになってしまっているのが残念。
まあ、そんなことをおいといても、これは面白かった。

ストックホルムの密使(上) (新潮文庫)

ストックホルムの密使(上) (新潮文庫)

ストックホルムの密使(下) (新潮文庫)

ストックホルムの密使(下) (新潮文庫)