転落

作者:永嶋恵美|講談社文庫
「ボク」は見知らぬ街で、荷物を奪われ、ホームレスとなってしまう。
墓場で食料を漁っていると、麻由という小学生から弁当を渡される。
「ボク」が弁当を食べると、麻由はクラスメートへの嫌がらせをするように命じる。
自転車のタイヤを割いたり、車を傷つけたり、要求はエスカレートしていく。
「ボク」と麻由の間に不穏な緊張感が高まり、やがて終末を迎える。
第二部では「ボク」の正体が女性であり、殺人事件で指名手配されていることが発覚する。
かつて親友だった女性の高山は、自宅に「ボク」=知実をかくまうことにする。
高山は子供を失ったことで、離婚をし、栄養士として病院で働いていた。
老人ばかりが入院している職場は人間関係も悪く、ぎすぎすしていた。
栄養状態の悪いホームレス生活のため体調を崩した知実と高山のひっそりとした共同生活。
だが、それもあるきっかけで、破滅を迎えることになる。
救いがなく、後味の悪い内容だが、不思議と読み応えがあった。
明野照葉に雰囲気は似ているが、こちらはもっと不条理だった。
登場人物に魅力がないところもリアリティを感じさせるが、そこは小説として少しマイナスだ。

転落 (講談社文庫)

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