そして名探偵は生まれた

作者:歌野晶午祥伝社文庫

  • 文庫本裏書き

景浦逸水は、下世話な愚痴が玉に瑕だが、正真正銘の名探偵である。
難事件解決のお礼に招かれた伊豆の山荘で、オーナーである新興企業の社長が殺された。
雪の降る夜、外には足跡ひとつなく、現場は密室。
この不可能犯罪を前に景浦が下す推理とは?しかし、事件は思わぬ展開に・・・・
雪の山荘、孤島など究極の密室プラスαの、ひと味違う本格推理の傑作。

  • 感想

四つの中編作品が収められているが、表題作の「そして名探偵が生まれた」で驚かされる。
いかにもの名探偵が、自分の実績を強調し、登場する様はコミカルでスピード感がある。
その後の展開に意外性に富んでいて、こういうのもありかなと思わせる。
「生存者、一名」は新興宗教の信者たちがテロを起こし、逃げ込んだ孤島で起きる殺人事件。
これも前半部分は面白かったが、生存者が二人になった時点で、犯人がどちらかだと分かってしまう。
伏線の張り方が面白かっただけに残念。でも緊迫感のある作品。
「館という名の楽園で」は久々に会う友人に招かれた館で起きる茶番劇。
50歳を過ぎた推理マニアたちが、推理ごっこをするのは滑稽で、あまり面白くない。
最後に深刻な事情が現れるが、それをさらっと流したのは良くない。
「夏の雪、冬のサンバ」は新宿のぼろアパートに住む、外人たちが巻き込まれる事件。
これはファンでなければ酷評されるだろうな。全然面白くなかった。
前半二つの話は面白かったが、後の二つは面白くなかった。

そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3)

そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3)