ひとり

作者:新津きよみ|角川ホラー文庫

  • 文庫本裏書き

中学2年の夏、桃子は親友のすみれとバス旅行をしていた。
ところがそのバスが事故を起こし、ふたりは崖下に転落してしまう。
大怪我をしたすみれとともに救助をまつ桃子だが、すみれは「わたしの分まで生きてね」と言い残して、桃子の前で息を引き取った。
その日以来、桃子は「すみれが自分の中で生きているような」不思議な経験をしながら成長した。
生と死で別たれても続くふたりの友情を描く、長編ホラー小説。

  • 感想

早川桃子は事故後、名古屋の大学に進み、東京の防災都市計画研究所に勤めていた。
事故のあと、不思議に成績が上がり、かつ人の危機に関して敏感になっていた。
そんな桃子の周辺で、一人暮らしの女性が殺害されるという事件が連続して発生する。
3人目の被害者は桃子の隣人で、担当する刑事から、取り調べを受ける。
その刑事の父は、桃子が事故に遭遇した時に同じバスに乗っており、死亡していた。
桃子が殺害現場で発見した「ひとり」という紙切れ。
犯人は桃子にも危害を加えようとする。
事故で一人だけ生き残った桃子は自責の念に駆られて生きてきた。
同時に事故被害者の家族たちは、早川桃子という少女に特別な感情を持って過ごしてきた。


不思議なエピソードもあるが、これはホラーというよりはミステリになるだろう。
ストーリーの進行は面白く、期待しながら読んだのだが、犯人があっけない。
流れからは外れてはいないのだが、この犯人では、大事故の生き残りの主人公の桃子の存在は生きてこない。
まあ、最後まで読んだから面白かったのだけど。

ひとり (角川ホラー文庫)

ひとり (角川ホラー文庫)