希望

作者:永井するみ|文春文庫

  • 文庫本裏書き

3人の老夫人が立て続けに惨殺される事件が発生、犯人は14歳の少年だった。
5年後、少年院を退院した彼が何者かに襲われる。
殺人犯の息子を恐れる母、
その母親を担当する女性カウンセラー、
事件に関わり続ける刑事と雑誌記者、
そして少年と同世代の被害者の孫たち・・・
事件周辺の人々の心の闇が生んだ慟哭のミステリー。

  • 感想

カウンセラーの環は、14歳で殺人を犯した息子を持つ母の陽子から悩みを打ち明けられていた。
陽子は雑誌記者の林から熱心に口説かれ、手記を発表し、印税で被害者に慰謝料を払っていた。
それでも近々出所する息子の友樹への接し方がわからず、不安で仕方がない。
環は、自分のキャリアをアップさせるため、熱心にカウンセリングに臨む。
だが、彼女自身、家族を少年犯罪で失っていた過去があった。
一方で、友樹によって殺害された老婆の孫たちは、ネットワークを築き、出所後の友樹を狙う。
まもなく、友樹が襲われる事件が発生し、直後に陽子も襲われる。
友樹を逮捕した刑事の海棠は、再び事件を担当することになるが・・・


性的に奔放な環と、彼女に翻弄される林と海棠。
犯罪者の孫たちが友樹をターゲットにして、再び罪を問う計画。
陽子の不安と、友樹のつかみどころのなさ。
この作品の登場人物はすべて、悩みあるいは不安を抱えている。
そのためストーリー展開が読めず、スリルがあった。
文庫本で600ページを超える長編だが、長さは感じず、面白く読んだ。
表紙がイマイチで期待していなかったが、これは良いミステリーだ。

希望 (文春文庫)

希望 (文春文庫)