人間処刑台

作者:大石圭角川ホラー文庫

  • 文庫本裏書き

網膜剥離を理由にボクシング界を去ったものの、戦いの熱気が忘れられずにくすぶっていた小鹿。
彼のもとに、格闘エージェントの美女が訪れ、世界最強の男、ラムアとの一戦を持ちかける。
それは、アンダーグラウンドファイトへの招待状だった。
闇のリングをまばゆく照らす光。
血に餓えた観衆を熱狂させる野獣たちの死をかけた戦いが始まる。
暴力だけがすべてを支配する、限りなく残酷で官能的な世界を濃密に描く。

  • 感想

作者には珍しい、格闘モノを題材にした小説で、これはホラーのジャンルには当てはまらない。
小鹿はミドル級の日本王者になったが、網膜剥離を患い、ボクサーとして引退を余儀なくされた。
その後、高層ビルの窓ふきのアルバイトをしながら、時々、海外へ地下ファイトに赴く。
前半は、小鹿の自分語りが続くが、このくだりは作者特有のナイーブな描写が続く。
地下ファイトはレフリーはいるが、基本的に相手が死ぬまで試合は止まらない。
小鹿はデビューから負け知らずだが、強い相手にあたっていないだけだと感じている。
そんなとき、最強の王者、ラムアの対戦相手の日本人が試合直前に逃走し、小鹿が戦うことになる。
ラムアの現在までの足跡も丁寧に描かれており、これも読み応えがあった。
だが、クライマックスの二人の対戦は少し迫力不足だった。わるくないのだけど。
それよりも中盤で展開する、女子選手の三浦美紗の死闘が面白かった。

人間処刑台 (角川ホラー文庫)

人間処刑台 (角川ホラー文庫)