北緯四十三度の神話

作者:朝倉卓弥|文春文庫

  • 文庫本裏書き

「大事な人の死は、たぶん決して忘れることはできません」
ラジオ局で深夜番組を担当する快活な妹・和貴子と、卒業後も大学に籍を置き続ける姉・菜穂子。
北の街を舞台に対照的な二人の微妙な距離が丁寧にたどられていく。
掛け違ったままのそれぞれの想いの行き着くさきは。
清冽な感動を呼ぶラスト。

  • 感想

大学で助手を務める姉の菜穂子とDJの和貴子。
交通事故で両親を亡くしてから、二人で生きてきた。
樫村という菜穂子の同級生と、和貴子が付き合いだしたころから、二人の仲はぎくしゃくする。
樫村は和貴子と婚約するが、事故で死亡し、二人はまた向かい合うことになる。
菜穂子は樫村に恋していたことを隠していたが、和貴子には見抜かれていた。
和貴子のDJの実況と、菜穂子の戸惑う心境をつづった物語。
この作者の作品は丁寧で、読み応えがある。
デビュー作の「四日間の奇蹟」はプロットが東野圭吾の「秘密」と被っていたので損をしたと思う。
その後の作品も悪くないのだが、何となく煮え切らない。
本作も面白いのだけど、デビュー作の魅力には届かなかった。
ただ、和貴子の紹介する曲は良いし、ネーナの「ロックバルーンは99」は聞きたくなった。

北緯四十三度の神話 (文春文庫)

北緯四十三度の神話 (文春文庫)