空とセイとぼくと

作者:久保寺健彦幻冬舎
父と上野公園でホームレスとして暮らす少年零。
犬のセイと仲良くなるが、父が死亡し、施設に引き取られることになる。
零はセイと施設を脱走し、その後は公園を転々としながら生きていく。
ゴミをあさり、食事を得て、公園の便所で体を洗う日々。
リョウという少年に出会ったのは零が14歳の時だった。
リョウに誘われ、新宿でホストになるが、人と付き合いの経験のない零はポチと呼ばれる。
リョウのマンションの屋上に犬小屋を造り、セイと生活を送り、零は徐々にホストの業務を覚えていく。
金は使わずに野放図にカバンに入れ、辞書を読み、人間生活になじむ零。
売れっ子のホストになったが、疑うことを知らない零は、仲間の保証人となり、窮地に陥る。
零を救ったのは、常連客のリカで、彼女のマンションにセイとともに飼われることになる。
風俗嬢のリカは、自分の経歴を語ることを頑なに拒み、零は言われるがままに過ごす。
そんな中、零はストリートダンスを見かけ、その魅力にひかれ、踊るようになる。
犬と暮らしていた路上生活の経験がダンスにマッチしていて、みるみる上達する。
大会に出場するが、リカが何者に襲われる事態が発生する。
みなさん、さようなら」を読んでから、この作家の魅力にはまった。
今作も、犬しか友達がいないというホームレスが主人公で、ピュアな魅力がある。
また、束の間に訪れる甘い生活とそこからの決別は、悲しくて美しい。
本当にいい話を書く作家だと思う。

空とセイとぼくと

空とセイとぼくと