粘膜人間

作者：飴村行｜角川ホラー文庫

• 文庫本裏書き

「弟を殺そう」―身長195?、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太。
その暴力に脅える長兄の利一と次兄の祐二は、弟の殺害を計画した。
だが、圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親まで蹂躙され、村のはずれに棲むある男たちに依頼することにした。
グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか？
そして待ち受ける凄絶な運命とは・・・・。
第15回日本日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した衝撃の問題作。

• 感想

これは独自の世界観を披露しており、3部構成になっている。
舞台は近未来か、よくわからない日本のどこか。
第一部は弟の殺害を河童に依頼する兄弟から始まり、河童と雷太の死闘を描く。
第二部は非国民に貶められた少女が拷問を受けるシーンの描写で、この作品の重大な部分になっている。
少女は精神的拷問を受け、髑髏という薬を投与される。
髑髏は自分が悲惨な死に方をリアルに体験できるものだった。
少女は異端者として処刑されるのだが、処刑前の少女の恐怖を巧みに描写している。
ただ、ここをもう少し丁寧に書いていればもっと面白かった。
島田荘司の「アトポス」のように。
第三部は、殺された雷太が無くした脳を取り戻しに行く話。
一転してコミカルな話になるが、話のつながりが切れてしまったように思う。
グロテスクとコミカルが同居して、不思議な魅力が詰まった作品。
これはそこそこの面白さだが、この世界観を維持していれば今後の作品には期待できる。

粘膜人間 (角川ホラー文庫)