隠蔽捜査

作者:今野敏新潮文庫

  • あらすじ

主人公の竜崎は警察官僚のキャリアで、総務課長を務める40代半ば。
仕事に打ち込み、家庭を顧みず、周囲には原理原則を振りかざしている。
周りの評価は「変人」だが、仕事は完璧にこなし、上司との関係もそつがなかった。
「国家を守る」ために自分は働いているという信念を疑うこともなかった。
自分の出身の東大以外は、将来に支障をきたすと息子を無理やり浪人させる。
一見融通の利かない堅物だが、正義感にあふれていた。
だが、息子が麻薬をキメている現場を目撃し、保身に走るか、信念を貫くか苦悩にさらされる。

  • 感想

ベースになっているのは、未成年の少女強姦殺人事件の捜査。
容疑者は現職警官に絞られ、竜崎の所属する警察庁は、身内の不祥事をもみ消そうとする。
迷宮入りの方向で上層部が方針を決めようとするが、竜崎は正義感を振りかざす。
竜崎の描写は鼻もちならないエリート至上主義で、反感たっぷりのキャラクターだ。
変人が苦悩しながら家族の問題を解決していく過程は面白い。
これはエリート官僚の家族問題を主題にした新感覚の小説だった。
反感を持ちながらも、リアリティがあった。

隠蔽捜査 (新潮文庫)

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