犯罪小説家

作者:雫井脩介双葉社

  • あらすじ

小説家の待居は、昭和の家族の確執を描いた「凍て鶴」で文学賞を受賞する。
「凍て鶴」は映画化の話が持ち上がり、人気脚本家の小野川が監督に名乗りを上げる。
エキセントリックな小野川の性格に振り回されつつ、待居は映画化の話を了承する。
脚本を作る段階で小野川は、「凍て鶴」のヒロインについてある女性の類似点を提示する。
かつて伝説的な自殺サイトを運営し、数年前に自殺した蓮美という女性だった。
蓮美は待居の自宅の近くに住んでおり、自殺サイトの関係者を調査し始める小野川。
小野川に不気味なものを感じ、待居は距離を置こうとする。
だが、小野川は今泉という女性ルポライターに接近し、待居の過去を調べるよう示唆する。
今泉は、自殺サイトの関係者と接触するにつれ、待居が蓮美の自殺を幇助したのではないかと考えるようになる。

  • 感想

小説家の待居、脚本家の小野川、ルポライターの今泉の3人によるサスペンス。
自殺サイトのスレッドを読み解き、遺書の内容を推理していくところには緊迫感があった。
妄想に加え、現実から乖離した浮遊感もあるが、これが独特の雰囲気を形成している。
また、結末に繰り広げられる狂気は、何となく江戸川乱歩の世界を彷彿させる。
「嘘貌」「火の粉」に並ぶ傑作だった。

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