砂漠

作者:井坂幸太郎|実業之日本社
盛岡から仙台の大学に入学した北村は、最初のコンパで鳥井と西嶋と出会う。
やませみのような髪型をした鳥井と、「砂漠に雪を降らせる」と自己紹介した西嶋。
男3人と時々超能力を使える南と、冷徹な美貌を持つ東堂の女性2人。
5人はボーリングや麻雀に興じ、キャンパスライフを送る。
そのころ、仙台には「お前は大統領か?」と聞き、暴行を加えるプレジデント・マンが跋扈していた。
プレジデント・マンを捕らえようとした北村たちだが、鳥井が左腕切断という重症を負う。
軽い青春小説だと思っていたが、ここで一気に重くなった感じ。
それでも、この作家の軽快な会話は相変わらずで、暗さは感じない。
怪我から立ち直る鳥井と、大口をたたき続ける西嶋と、現実的な北村。
彼らに絡む女性たちの描き方も良かった。
様々なトラブルがありながらも、結末の卒業式のシーンとその後のエピソードがいい。
悪くない小説だが、この作家にしては平凡な出来だと思った。
でも、会話に含まれる過剰なくらいの警句めいたセリフが薄まったのはいい。
初期の小説が面白すぎただけに、いずれまた傑作を期待している。

砂漠 (Jノベル・コレクション)

砂漠 (Jノベル・コレクション)