そして、警官は奔る

作者:日明恩講談社文庫

  • あらすじ

無骨な刑事の武本と、おぼっちゃまの潮崎が活躍する警察小説の第2弾。
蒲田警察の強行犯に異動となった武本は、住民の通報から、監禁されていた幼女を救出する。
これをきっかけに、幼児ポルノと人身売買の犯罪組織が浮かび上がり、捜査を開始する。
武本は「冷血」と異名をとる和田刑事とコンビを組むが、容疑者の人格を破壊する和田の手法に疑問を持つ。
また、生活安全課の刑事の人情味あふれる刑事の小菅から、犯罪者への接し方を聞き、悩みは深くなる。
一方、潮崎は警察を退職し、公務員上級試験に合格し、キャリアへの道を歩み始める。
そんなときに、国籍のない子供たちの面倒を見る辻岡医師と羽川のぞみと出会う。
違法なことをしているが、彼らに共感した潮崎は手助けをしようとする。
武本と潮崎の行動が交差するとき、犯罪の全容が明らかになる。

  • 感想

一作目の「それでも、警官は微笑う」ですでにキャラが立っていた武本と潮崎。
雰囲気は異なるが、京極夏彦の主要登場人物並みに、キャラが確立されている。
前作の登場人物に加え、今回は新たに「冷血」の和田と、「温情」の小菅というキャラも登場。
特に和田が「冷血」の仮面を被るに至った独白は衝撃的だった。
話は前作同様に面白く、700ページ近い長編だったが、飽きることはなかった。
茶道の宗家の御曹司で、警察庁長官にまで影響力を持つ潮崎はぶっ飛んだキャラで例外的な存在だ。
その一方で武本をはじめとする刑事たちは、ごく自然で、警察という組織の中で人間臭い悩みを持つ。
このギャップが面白いのだろうな。次作も十分期待できる。

そして、警官は奔る (講談社文庫)

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