出星前夜

作者:飯島和一|小学館

  • あらすじ

島原の乱を描いた歴史小説
長崎の医師の外崎恵舟は、松倉家の支配する村に診療で訪れる。
そこで目にしたのは、過酷な税のため、疫病に苦しむ子供の姿だった。
医療にあたる恵舟だが、松倉家の役人により、退去を命じられる。
その様子を見ていた19歳の少年の寿安は、怒りを募らせ、子供たちを集め、廃教会に立てこもる。
子供たちの反乱と高をくくっていた役人たちは、鎮圧に乗り出す。
だが、幼少のころから銃の取り扱いに慣れた寿安たちは、役人たちを散々に追い散らす。
庄屋の鬼塚監物は、旧有馬家の水軍衆で帰農していたが、寿安を救うために、役人に掛け合う。
松倉家と交渉の末、寿安の命を救い、救い米を引き出すことに成功するが、すぐに反故にされてしまう。
耐え忍んでいた監物はついに藩に対して反乱を起こすことを決意する。
同じころ、天草でも弾圧された旧キリシタンが、益田四郎を担ぎ、反乱を起こす。
天草の島民と島原の監物たちは合流し、原城に立てこもる。
戦慣れした監物たちは、西国大名を撃破するが、次第に追い詰められていく。

  • 感想

個人的には、今一番面白い歴史小説を書く作家だと思っている。
この小説も、権力に立ち向かう名もなき人たちを魅力十分に描いている。
抑えつけられることに慣れきった、かつての勇将監物と、父親をキリシタンとして殺害された寿安。
弾圧されるキリシタンの拷問の描写、300ページを超える戦闘シーンは読み応え十分。
また、民衆の蜂起を取り繕うために右往左往する松倉藩の家老たちの行動も緻密に描いているのも良い。
「すべての民にとって不満のない世などありえない。しかし、民を死に追いやる政事のどこに正義があるというのか。」
オビに書かれたセリフがたまらなく良いし、これは最近読んだ小説の中でも最高の内容だった。

出星前夜

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