夜空のむこう

作者:香納諒一光文社文庫

  • あらすじ

編集者と彼を取り巻く人たちの交流を描いた青春小説で、14本の話が収められている。
主人公の篠原は29歳で、新宿二丁目で編集プロダクションを営んでいる。
共同経営の越智は3歳年上だが、肝心な時に行方が分からなくなる悪い癖があった。
二人をサポートするのは新人の佐智子と、ベテランのフリーライターの古橋。
取材で巻き込まれるトラブルや、締切に追われるプレッシャーとともに物語は進む。
人気ヘアアーチストやダイエットの女王、かつてのミステリーの大家への取材。
行きつけのゴールデン街の飲み屋とクライアントの大手出版社との人間模様。
人が集まり、離れ、篠原もやがて作家を目指すようになる。

  • 感想

文庫本で600ページを超える長編で、様々な登場人物が出てくるが、面白かった。
篠原をはじめとする登場人物の造詣がいい。人を思う心が嫌みなく描かれている。
仲間の離脱や死など、劇的な場面が登場するのも、話を盛り上げている。
篠原は少しピュア過ぎるが、30を目前とした焦りがストレートに伝わってくる。
ストーリーも面白いけど、久々に雰囲気の方に惹かれた。
良い話を書く作家なのに、あまり注目されていないのは少し残念だ。

夜空のむこう (光文社文庫)

夜空のむこう (光文社文庫)