作者:小杉健治|集英社文庫
一貫して裁判シーンが舞台で、事実が明らかになるミステリー。
社長夫人の奈緒子は、夫殺害の容疑で逮捕され、罪を認め、裁判にかけられる。
本人が自供しているのだから、裁判はすぐに結審するものと思われた。
だが、直前になって交代した原島弁護士は、彼女は夫を殺害していないと断言する。
原島弁護士は、奈緒子の家族に焦点をあて、彼女が自分が罪をかぶってまで、守ろうとする原因を導きだす。
かつて奈緒子には精神薄弱の弟がおり、彼女の結婚前に自殺をしていたことが判明する。
そこから、奈緒子が結婚前に起きたトラブルが明らかになるが、関係者の口は固かった。
一人で奮闘をする原島弁護士に、奈緒子は頑なだったが、徐々に過去の出来事が明らかになっていく。
裁判の会話が中心だが、平坦にならず、話を作ることが上手い作家だと思った。
この作家の時代小説は読んだことはないが、現代小説では今のところハズレはない。

絆 (集英社文庫)

絆 (集英社文庫)