墓標なき墓場

作者:高城高創元推理文庫
日本ハードボイルドの礎を築いたといわれる伝説の作家による作品。
昭和33年の北海道東部の霧に煙った釧路が舞台。
その年の夏の未明、運搬船が沈没し、乗員6名全員が死亡した。
その直後、入港しようとしたさんま漁船が、岸壁に衝突した。
不二新報の釧路支局長の江上は、二つの事故の関連性を調査し、スクープを放つ。
だが、その直後に何者かの策謀により、釧路支局長の座を追われてしまう。
3年後、当時の関係者の二人が不振死を遂げ、江上は再び、釧路に戻り、事件を追い始める。
この作家は昭和30年代にいくつかの小説を発表し、その後、筆を絶ったらしい。
で、この作品は作者の唯一の長編だが、文庫本で200ページほどですぐに読み終えた。
時代を感じさせる描写と台詞回しだったが、読みやすかった。
だが、結末に近づくにつれ、唐突な展開となり、読み終えた後の感想は「駄作」だった。
確かに、傑作だったら幻の作品にはならず、埋もれていなかっただろう。
こんなモノをサルベージして商品にする出版社の意図がわからない。
幻の傑作という言葉に騙されたが、昭和30年代のマスコミの人間が怠け者だったということは理解した。

高城高全集〈1〉墓標なき墓場 (創元推理文庫)

高城高全集〈1〉墓標なき墓場 (創元推理文庫)