懐郷

作者:熊谷達也新潮文庫
昭和30年代を舞台に、様々な環境で生きる人(主に女性)たちを描いた短編集。
「磯笛の島」は海女だった妻を事故で亡くし、島を離れた男が、再び島に戻り、再婚する話。
「オヨネン婆の島」はテレビ放送が始まったのに、電気も来ない離島に住む祖母と母と孫の話。
「お狐さま」は仙台から農村に嫁いだ若妻が、お稲荷様で野狐を見かけた後に起こる異変を描く。
「銀嶺にさよなら」は、学生運動に幻滅し、冬の雪山にアタックする女性の話。
「夜行列車の女」は姑の辛い仕打ちに堪えかね、出稼ぎに出ている夫を探しに行く妻の話。
「X橋にガール」は朝鮮戦争に出征したアメリカ兵士の帰りを待つ売春婦の話。
「鈍色の卵たち」は集団就職で東京に行った教え子を訪ねる若い女性教師の話。
この作品は悪くは無いが、現状を受け入れ、耐える女性の話が多く、少し共感できない部分があった。
女性をあまりにもステレオタイプとして扱い過ぎている。やはりこの作家は長編の方がいい。
それにしても面白い小説を書く作家だけに、どうしてつまらない盗作なんてしたのだろうと残念でならない。
これからもこの作家の小説は読むだろうけど、味噌をつけたことには代わりは無い。
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