スメラギの国

作者:朱川湊人文藝春秋
人間と猫との戦争を描いたサスペンスホラー。
営業マンの志郎は、麗子との結婚を控え、坂の多い神音町のアパートに引っ越してきた。
アパートの裏には空き地があり、中心は林のように鬱蒼としており、多数の猫が住み着いていた。
動物好きの志郎や麗子に懐く猫もいたが、林には猫の支配者のスメラギが君臨していた。
スメラギには不思議な能力があり、彼に触れた猫達は色彩感覚と思考能力を獲得するようになった。
アイスとチョコの兄弟も、スメラギに会い、人間の会話が理解できるようになった。
ある日、アイスは猫狩りをする人間に捕らえられ、殺される寸前にスメラギに救い出される。
だが、水槽に漬けられたため、アイスは耳が聞こえなくなり、仲間から追い出されてしまう。
そのころ、アパートの裏の空き地に車を止めようとした志郎は不注意からスメラギの子供をひき殺してしまう。
直後から、猫達は志郎に牙を剥き、攻撃を加え始める。
可愛がっていた猫を殺害してしまった志郎は怯えるが、猫達の攻撃は止まらない。
だんだんと志郎はやつれ、荒んでいくが、麗子にまで危害が及び、スメラギ達と戦うことを決意する。
一方、志郎の同僚の村上は、一人息子をダンプカーにひき殺され、運転手を殺害することを決意していた。
息子のために100機の戦闘機のプラモデルを完成させたら、運転手を刺し殺しに行くのだ。
そんな村上の前に、ぼろぼろになったアイスが現れ、村上は自宅で介抱することにする。
かけがえの無いものを奪われた怒り、悲しみがテーマで、志郎、村上、アイスの3者の視点から話は進む。
クリスマスの夜、志郎はスメラギ達と全面対決し、村上は運転手を殺しに行く。
ホラー色も強いが、どちらかといえば大人向けのファンタジー小説だと思う。
猫好きの人には嫌悪感を持つ描写が多々あるが、自分はこの話は非常に気に入った。
この作家はデビュー作の「都市伝説セピア」から、期待を裏切らない話を書く貴重な作家だ。
この作品は代表作の一つになるはずだ。
[rakuten:book:12742118:detail]