蝿の王

作者:田中啓文角川ホラー文庫
大量の虫のおぞましい描写と、どことなくコミカルな会話が不思議にマッチしたホラー。
女子高生の瀬美は、昆虫学者の両親を事故で亡くし、叔母と二人で暮らしていた。
アイドルグループのメンバーのショウが恋人なのだが、多忙のため、なかなか会えずにいた。
ある夜、淫夢を見た瀬美は妊娠してしまうが、オカルト好きのショウは異様な興味を示す。
同じ頃、同級生たちと悪魔召還の儀式を行っていた小学生のオサマルは悪魔に取り憑かれてしまう。
瀬美は、中絶するために産婦人科に行くが、寝ていたベッドが浮き上がり、医者と看護師を押しつぶしてしまう。
一方、オサマルの住むマンションの隣には、瀬美の親友の梨香の叔母が住んでいた。
叔母には赤ん坊が生まれたばかりで、梨香は赤ん坊をあやすことを楽しみにしていた。
だが、オサマルが放った虫で、赤ん坊の体内に悪魔が入り込み、母親の乳首を噛み切り、大量の虫が発生した。
赤ん坊の両親は権威のある神父に悪魔祓いを依頼し、瀬美とショウも同席する。
赤ん坊に取り憑いた悪魔は神父を愚弄した挙句、神父と両親を殺害し、梨香を精神病院送りにする。
難を逃れた瀬美とショウは、メンチョロー太子と名乗る薄汚い老人と出会う。
メンチョロー太子は隠れキリシタンの末裔で、ハルマゲドンを預言する書を持っていた。
ベルゼブブが生まれる前に、悪魔の行動を止めようとするが、都内のあちこちで惨劇が発生する。
動物園のショーで、チンパンジーが暴れ、大勢の子供を殺害し、公園では野犬が幼児を襲う。
また、オサマルにクマンバチを飲まされた幼稚園の教諭は、30名近い子供を殺害する。
やがて、新宿に巨大な蛆虫が発生し、ビルをなぎ倒し、自衛隊の戦車を押しつぶしていく。
大勢の子供が意味もなく殺されるシーンはかなり背徳的だし、何より虫の描写が気持ち悪い。
でも、ストーリーは面白く、会話はかなり笑いのツボに入った。
たぶん、ほとんどの人は気持ち悪く思うだろうが、自分はこの「ヤバい伝奇ホラー」を気に入った。

蝿の王 (角川ホラー文庫)

蝿の王 (角川ホラー文庫)