パンドラの火花

作者:黒武洋|新潮文庫
死刑制度の廃止された近未来の日本。政府は確定死刑囚の処遇を決めかねていた。
そこで、死刑囚をタイムマシンで過去に送り、犯罪を起こす前の自分を説得させるというプランを実行する。
死刑囚には政府の役人が監視役として配置され、歴史を大きく変えないように見守る役目を負う。
監視役は17号、18号など、番号で呼ばれており、過去に戻った死刑囚とペアを組んで行動する。
この小説では3人の死刑囚の行動が描かれる。
横尾は、16歳の時に自分の家族六人を皆殺しにし、さらに5人を殺害し、35年間刑務所にいた。
三日月はネットを通じて動物虐待が高じ、小学生など5人を焼き殺し、死刑が確定していた。
氏家は会社での疎外感から、爆破事件を起こし、多くの犠牲者を出し、30年以上死刑を待つ身だった。
彼らは17号、18号、19号とともに、犯罪を起こす直前の自分に会い、説得を試みる。
第1章、第2章が横尾、第3章は三日月、第4章と第5章は氏家が描かれ、独立した話のような雰囲気だ。
横尾の行動と、過去の自分の目線から描いた三日月の話は、結末も意外で面白い。
氏家の話はヒューマニズムに溢れるオーソドックスなストーリーだ。
ただ、エピローグで監視役の19号の行動が描かれるのは、詰め込み過ぎの印象が強くなった。
独立した話として、短編集にした方が良かったのではないか?

パンドラの火花 (新潮文庫)

パンドラの火花 (新潮文庫)