さよなら、そしてこんにちは

作者:荻原浩|光文社
普通に生活している人達のちょっとしたハプニングを取り上げた7つの短編集。
「さよなら、そしてこんにちは」は葬儀社に勤める笑い上戸の社員を描いている。
ビューティフルライフ」はリストラに会った父親が家族とともに農園を興そうという話。
「スーパーマンの憂鬱」は主婦向けのワイドショーを見て、仕入れを考えるスーパーの主任の話。
「美獣戦隊ナイトレンジャー」は子供向けのヒーロー番組にはまった主婦の話。
「寿し辰のいちばん長い日」は一見頑固な寿司職人が、評論家風の客に戸惑い、駄洒落を飛ばす話。
スローライフ」はイタリア料理の評論家の主婦が、取材に追われ、てんてこ舞いになる話。
「長福寺のメリークリスマス」は雇われ住職が、妻子にせがまれ寺でクリスマスパーティーをしようとする話。
いずれの話も、他愛もないことに必死になり、ふと我に返った主人公の照れ隠しの仕草が良いし、共感できる。
この中で面白かったのは、「寿し辰のいちばん長い日」と「長福寺のメリークリスマス」
特に、坊主が変装してまで必死でクリスマス用品を買おうとする描写は笑える。
でも、今までの荻原浩の作品の中ではそれほど出来が良いとは思えない。
あまり短編を描かない作家だが、やはり長編の方が面白い。これはこれで悪くないのだけど。

さよなら、そしてこんにちは

さよなら、そしてこんにちは