藁の盾

作者:木内一裕|講談社文庫
前に読んだ「水の中の犬」はありふれたハードボイルド小説だと思った。
だがその後、この作者が「BE−BOP−HIGHSCHOOL」の漫画家のきうちかずひろであることを知った。
そのことに興味を持ち、デビュー作を読んでみることにした。
主人公の銘刈は38歳の警視庁機動警備隊に所属するSPだが、妻を癌で失い、希望を失っていた。
そんなとき、小学生の幼女を強姦して殺すという事件が発生する。現在ではありふれた事件だ。
だが、遺族の蜷川は日本財界の立志伝中の人物で、犯人殺害を決意する。
犯人は過去にも性犯罪で逮捕歴のある清丸という男で、すぐに指名手配された。
清丸逮捕の前に、蜷川は全国紙の1面に「清丸を殺してください。報酬10億円」という広告を出す。
清丸は匿われた仲間に殺されかけ、自ら福岡の警察署に自首してくる。
銘刈は部下の白岩と捜査一課の刑事達と共に、清丸を東京まで護送することを命じられる。
10億円という金に目がくらんだ奴らが、清丸を殺そうと狙っている。
清丸は出頭してきた拘置所で看守に刃物で襲撃され、入院した病院では看護士に毒入り注射を打たれそうになる。
護送を担当する刑事達の中にも、清丸の卑劣な人間性を嫌っているものがおり、護送は困難なものと思われた。
まず、機動隊の装甲車に守られ、九州を離れるが、機動隊員から銃撃される。
銘刈は警察の中にも10億に目がくらむモノがおり、武器を持っているだけ、タチがわるいという判断をする。
地元警察を撒き、新幹線で逃亡するが、停車する駅ごとに襲撃される。
蜷川は何らかの形で、清丸の位置情報を察知しており、それをサイトで公開していた。
護送チームに裏切り者がいることを疑うが、襲撃者に1人ずつ倒されていく。
新幹線での逃亡を諦めた銘刈はレンタカーで逃亡するが、危険はさらに増した。
コンビニやファミレスで突然、襲撃してくる一般市民。
卑劣な犯罪を起こした野郎のために、盾となり犠牲なる必要はどこにもない。
それでも、銘刈は死んだ妻に失望されたくないという思いで任務を続ける。
読んでいる間は確かに面白く、まるで映画のシナリオのような小説だと思った。
デビュー作としては悪くない。でも作者が元漫画家というほどの驚きは無かった。
確かに「水の中の犬」よりは面白いと思ったが。でも読みやすいので、今後のモチーフに期待。

藁の楯 (講談社文庫)

藁の楯 (講談社文庫)