他人事

作者:平山夢明集英社
無意味で理不尽な暴力に彩られた14の話が入った短編集。
生きている人間の足を金挽鋸で切断し、子宮を鋏で切るなど、グロテスクな描写がかなりある。
「他人事」は横転した車に閉じ込められた男女にサイコパスが近づいてくる話。
「倅解体」は家庭内暴力で手につけられない息子を殺害しようとする夫婦の話。
「たったひとくちで・・」は料理評論家の元に娘を誘拐した男が訪れ、料理を作ることを強要する話。
「おふくろと歯車」は父の家庭内暴力に晒されている彼女を救い出し、逃亡する話。
「仔猫と天然ガス」は1人暮らしの中年女性の自宅に侵入し、プロレス技を本気で試す男達の話。
「定年忌」は定年退職の日に、部下達にリンチに遭い、半殺しにされる話。
「恐怖症召還」は人が潜在的に恐れる死に方を、頭の中で再生させ、発狂させる話。
「伝書猫」は別れた男性の暴力に怯えながら1人暮らしをする女性の元に、飼い猫が小指を咥えてくる話。
「しょっぱいBBQ」は家族連れでバーベキューに出掛けた先で、子供の死体を解体する男を目撃する話。
「れざれはおそろしい」はイジメに堪えかねた生徒が自殺する手紙を教師に送りつけ、教師達が右往左往する話。
「クレイジーハニー」は地球から遠く離れたコロニーで、慰安アンドロイドが人々を殺戮してまわる話。
ダーウィンとべとなむの西瓜」は移動式処刑自動車の運転手を命じられる男の話。
人間失格」は自殺の名所から飛び降りようとする男女が、ポジションの取り合いをする話。
「虎の肉球は消音器」は高校時代の同級生が、真夜中の動物園に忍び込む話。
全編にわたり、無国籍風なイメージと、耐え切れないほどの暴力と痛みの描写の中にも乾いた雰囲気が漂っている。
「仔猫と天然ガス」と「定年忌」は謂れのない暴力が理不尽すぎて、笑ってしまった。
また、文章も相変わらず面白い。
「毎日、飯を喰うよりも拳骨を喰らっている奴がスカッと爽やかコカ−コーラでいられるはずがない。」
「バットで除夜の鐘ほど打ち鳴らされた頭もだいぶ緩んでしまった」
「両手両足を切断されていたので、いまでは鼻糞もほじれない。それでも罪は許されず、たまに欲求不満の若い衆が突撃しては半殺しにしている」
「校長先生の咳払いのような屁が二度、尻から出て行った。」

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