楊令伝

作者:北方謙三集英社
北方謙三の「水滸伝」は傑作だった。
自分の中では、この10年で一番面白かった本といっても過言ではない。
元々、原典の水滸伝が好きで、特に、駒田信二の120回本の訳本は何度も読み返してきた。
吉川英治や柴田練三郎の水滸伝も面白いが、原典の焼き直しに過ぎなかった。
北方水滸伝は登場人物はそのままで、まったく違う反乱を描いたストーリーとなって甦った。
好漢たちが反乱を起こし、結局は朝廷に帰順し、悲劇的な末路を迎えるのが原典。
北方水滸伝は、初めから梁山泊を拠点にし、宋を倒し、新たな国家を作ろうとする話になっている。
原典では108人の好漢が集まるまでは、誰も死なないが、北方水滸伝は冒頭から主要人物が死亡する。
これは衝撃的だったが、より深く一人一人の好漢の死に様を描くことができ、19巻という長さを感じることはない。
それより、もっと続きを読みたいと思っていたら、「楊令伝」という後編で再び登場した。
今、3巻まで刊行されていて、梁山泊の残党が新たに反乱を企てようとする展開となっている。
1,2巻は「水滸伝」の余韻が残ったまま、「少し好漢を死なせすぎたな」など思って読んでいた。
水滸伝で死んだ好漢を振り返るシーンが多いのも良かったが、岳飛や方ロウの登場で、面白くなってきた。